新しいアイデアで、<br>誰もが活躍できる社会に

Works / People

新しいアイデアで、
誰もが活躍できる社会に

公益事業部
国内事業開発チーム  チームリーダー

菊地 佐知子

Sachiko Kikuchi

Profile

東京大学大学院 情報学環学際情報学府 社会情報学専攻。海外の事例をもとに、民主主義社会における寡占的メディアが国民に与える政治的影響を実証分析した。日本財団では、役員秘書を経てファンドレイジング、広報を担当。結婚を機に一度財団を離れるが、復職。2児の母。現在は「日本財団 はたらく障害者サポートプロジェクト」をはじめ、複数のプロジェクトリーダーとして事業を推進している。

入会後のキャリアステップ

2010

入会、総務グループ ファンドレイジングチームに配属

立ち上がって間もないファインドレイジング担当の部署で、情報発信を担当。

2017

情報グループ 編集企画チームに配属

ファンドレイジングチームとの兼務になったのち異動。ブランディング、マスコミ対応、広告などを担当。

2019

公益事業部 国内事業開発チームに配属

様々なプロジェクトを開発する部署で、これまでに障害者の就労支援や芸術活動支援、子どもの自殺対策などのプロジェクトリーダーを担当。現在、複数の新規プロジェクトの立ち上げも行っている。

私の仕事

国の事業に参入する新たな試みで、障害がある方の就労を支援

日本財団が目指す「みんながみんなを支える社会」「インクルーシブな社会」とは、誰もが働く機会を得ることができ、活躍できる社会でもあると考えます。私たちは、障害があっても働きたい、社会に貢献したいと考えている多くの方々に就労の機会やより良い環境を創り出すことが必要と考え、これまで多くの支援を行ってきました。

そんな中、「日本財団はたらく障害者サポートプロジェクト」は、2015年4月にスタートした障害者就労支援の一連の取り組みです。地域に根ざした「モデル構築」と、年に1度専門家や関係者たちが全国から集まるイベント「就労支援フォーラムNIPPON」を柱として進めてきました。

また長らく対峙してきた大きな課題として、日本国内では、福祉事業所で働く障害者が得る賃金や工賃が非常に低く、障害者年金とあわせても自立した生活が難しいケースが多いということが挙げられます。

私たちはこれに対応する新たな試みとして、国立国会図書館の蔵書を電子データ化する事業に参入しました。これは、日本財団が国立国会図書館から請け負った大規模な業務を全国の福祉事業所に再委託することで、障害者の賃金・工賃の向上を図るというものです。一般企業も担う専門性の高い仕事なので、体制、環境、機材などの整備には細心の注意を払いスキームを構築しました。当初は「本当に障害者にできるのか」という懐疑的な見方もありましたが、初めての納品後に、素晴らしいクオリティだったとの評価をいただきました。

ロボットを活用する新しいアイデアで、重度の障害者の就労も可能に

一方で、「就労」の持つ意味は、単に多くの賃金や工賃を得るという側面だけでは語れません。障害の有無や程度に関係なく、社会の一員として働くことで、やりがい、生きがいに繋がるということも就労の意義だと考えています。それは例えば、介助がなければ外出できないような重度の障害がある方であっても同じです。周囲の人はどうしても無理をさせられない、つまり就労はできないし、しない方がいいという風に考えがちです。ですが、どんな方にも「機会を得ること」は必要なのではと考え、どうすればそれを可能にできるかという課題にも取り組んできました。

その答えのひとつが「技術の力を借りること」です。2018年11月、期間限定のカフェを日本財団ビルに開設しました。そこでは、身長120cmほどのロボットが客席に行ってお客さんの注文を聞き、飲み物をテーブルに運びます。ロボットの操作をしているのは、遠隔地にいる障害者たちです。例えばALS(筋萎縮性側索硬化症)という疾患で体を自由に動かせない方も、目線移動の入力でロボットを操作し接客することができます。

ロボットを操作する人をパイロットと呼んでいるのですが、お客さんはロボットの向こう側にいるパイロットとの会話を楽しんでくれました。脊髄の病気で体をほとんど動かせないパイロットの方で元は接客業をされていた方がいて、「自分がもう一度お客様を相手に仕事ができるとは思わなかった」と喜びの声をいただいたこともあります。このカフェはかなりの反響があり、国内だけでなく海外からも多くの取材を受けました。

ロボットの活用が障害者就労の支援につながる、というアイデアをプロジェクトとして構築し、実証実験してきたこのカフェ運営。日本財団の強みである幅広いネットワークを活かして産官学民の多方面の専門家に参加してもらい、チームで問題の解決法を考え、足りないところをどんどん埋めていきました。期間限定だったカフェも、どこかで常設できるように構想しています(*2021年6月に日本橋に常設)。

いま何をすべきか。「選択と集中」でプロジェクトを創る

実は障害者の就労支援プロジェクトを進めていくうえで、ひとつの「気づき」がありました。障害者就労支援に関する制度や取り組みは、障害者に限らず、例えば貧困状態の母子家庭の方や病気療養中の方、引きこもりにある方など、様々な理由で働きづらさを抱えている人の就労にも活かせるのではないか、ということです。多様な方の就労を支援することは、ひいては日本の労働力不足という社会課題の解決にもつながるのではと考え、新たなプロジェクトを立ち上げました。

こうしたアイデアを出しながらプロジェクトを構築するのは学びも多く楽しい過程です。とはいえ、実現可能なアイデアが容易に見つかるわけではありません。社会にどういう課題があって、何を最優先の目的とし、そのためにいま何をするべきかを、前例に囚われずゼロから組み立てるようにしています。日本財団では「選択と集中」とよく言われるのですが、何かを選択するということは何かを諦めることも求められ、優先順位をつけることの難しさを感じています。プロジェクトの提案から実行までの道のりは簡単ではありませんが、いい結果につながったとき、やはりやりがいを感じます。

私から見た、日本財団

自らが社会課題を発掘し、解決する

日本財団は概括的に言えば「社会の課題を解決する組織」ですが、具体的に何をやるかは自分たちで考えます。その中で、課題を発掘し、解決方法を設計・提案して、実践に移し成果を出すというすべてのフェーズにおいて、職員に大きな裁量が与えられていることはとても魅力だと思います。

「あまねく平等にではなく、優先順位をもつ」ことの大切さ

日本財団は「お役所的」「堅い」というイメージもあるようですが、特に災害などの有事には、とても迅速に物事が決定するスピード感と柔軟さがあると感じています。

また私たちの活動指針にある「あまねく平等にではなく、優先順位を持って、深く、且つ、きめ細かく対応すること」という点は特徴的で、「なぜ国や行政ではなく、民間の私たちがやるのか」「これをやることで何がどのように変化し、どんな指標でどう評価するのか」「局所的な出来事ではなく、社会にインパクトを与え仕組みを変える端緒となり得るか」など、単に良い事か否かではなく、様々な観点でプロジェクトを検討しています。

就職活動中の方へのメッセージ

社会を動かすような大きな仕事ができ、成長し続けられる

日本財団では若いうちからプロジェクトの運用を任されることも珍しくありません。自分の専門性を活かせる場面もある半面、多様なステークホルダーの中で、専門家に対して市井の声を届ける感覚で意見するべきときもあります。ひとつの専門性を仕事の礎とするより、その都度視点を変えながら多角的に物事を判断する柔軟性が必要かもしれません。
多くの人を巻き込みながら、ときに社会をも動かしてしまうような大きな仕事ができるのが、日本財団ならではの魅力。私は何年目になっても、成長の機会に恵まれた職場だと感じています。

社会を動かすような大きな仕事ができ、成長し続けられる